第7回 昭和19年4月
超スローリーディング中の漫画原作『この世界の片隅に』。
実家に里帰りして婚家に戻ったすずさんはストレスから円形脱毛症になり、ちょっと鬱な状態です。夫の周作さんと山の上から呉軍港を眺めて居る最中、戦艦大和が帰港してきます。
また映画版では片渕須直監督の執念の作画、「大和をファンタジーにしたくない」という理由で大和の艦橋で働く水平のカットを入れられています。大和の水平にも「この世界の片隅に」という人生はあったはずで、「戦艦大和の最後」として悲劇的に一括りにしてはいけません。
実際には呉軍港を一望できる場所には制限があり、「入山証」が必要だったそうで、夫の周作さんは文官とはいえ、家族に入港している軍艦の艦名を教えることはなかったでしょうから、この章は現実ではありません。
軍艦にも人と同じように人生があり、こうのさんが選ばれた軍艦は意図的なのか、かなり特徴的です。
漫画原作で軍艦名が出てくるのは「愛宕」「摩耶」「雪風」「大和」です。
愛宕は一等巡洋艦(重巡洋艦)で呉海軍工廠で製造、1932年就役。1944年のレイテ沖海戦の第二艦隊(栗田艦隊)旗艦となりましたがアメリカの潜水艦の魚雷攻撃で沈没。
摩耶も一等巡洋艦で1932年就役。同じくレイテ沖海戦で潜水艦の魚雷攻撃で沈没しています。
大和は1945年4月の沖縄への水上特攻で沈没したのは著名ですが、駆逐艦雪風はこの大和の護衛にあたり生存者を救出したのち生還した奇跡の駆逐艦です。戦後は引揚船となり、漫画家の水木しげるさんもこの船でラバウルから引揚ました。また賠償として台湾の海軍に譲渡され、1971年に解体されるという数奇な運命の駆逐艦です。
日本人は往々にして戦争遂行のための機械にすぎない戦闘機や戦艦に擬人的な思い入れを描き、妙に神聖化してしまうきらいがあります。特に戦艦大和は顕著です。他の国には見られない特異な奇習であり戒めるべきかとは思いますが、従事していた人たちにはそれぞれの人生があり犠牲になった方々まで戦犯とした貶めるのは慎むべきでしょう。






