2021年2月20日土曜日

[積読立読斜読] 『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか ― 人糞地理学ことはじめ』(湯澤規子著、ちくま新書、2020年)

 



2021年新書大賞第14位。


著者は1974年生まれ。法政大学人間環境学部教授。専門は「歴史地理学」。「歴史」は文献探索が主なのでしょうが、「地理学」にはフィールドワークも重要らしいです。過去の研究も対象が「結城紬」「胃袋」「ポテトチップス」と多岐に渡り今回が「糞尿」です。歴史研究からこぼれ落ちている日常を丹念に掬って、よくぞこんな資料まで見つけたという驚愕の新書になってます。編集者の慧眼恐るべし。


<著者紹介>




<この本の内容>

私たちの身近な存在でありながら、流されてしまえば忘れられてしまうウンコ。しかし、お尻の拭き方、始末の仕方も世界では様々な方法があったりするし、歴史的にはそれが重宝される時代もあったのだ。さらに、処理の対象とされるがその処理も一筋縄ではいかなかった。ウンコの視点から環境、経済、世界を見渡せば、新たな一面が見えてくる。


<この本の目次>

第1章 ウンコとは何か

第2章 世界がウンコに求めているもの―一番身近なSDGs

第3章 宝物としてのウンコ―近世日本の下肥

第4章 せめぎあうウンコの利用と処理―近代における「物質循環」の再編

第5章 都市でウンコが「汚物」になる―産業革命と大量排泄の時代

第6章 消失するウンコの価値―地域固有の清掃行政と戦後下水道物語

第7章 落し紙以前・トイレットペーパー以後―お尻の拭き方と経済成長

第8章 ウンコが教えてくれたこと―世界の分岐点についてのダイアローグ


<感想のようなもの>

副題が「人糞地理学ことはじめ」とあるように「人糞」と人との関係を歴史軸・地理軸から考察したのが本書です。

きっかけは愛知県の「結城紬」研究対象の工場の保管資料からかつて人糞が農村との間で肥料として有価で取引されていたという事実からはじまったようです。

江戸の人糞リサイクル社会、原武史さんの著書にある西武新宿線の「黄金列車」、名著『くう・ねる・のぐそ』(伊沢正名著)などの先行研究が漏れてますが、海外の事例研究や、トイレットペーパーの歴史、東西比較、神話・民話からの引用など、目配りが広範で、新書形態としてはよいと思いました。

人糞を肥料に転換する技術は日本独特のものだそうで、アフリカ諸国へトイレと一緒に技術供与できる感じがします。

人糞を直視することは生きることの素晴らしさを再認識させてくれるよい機会ですね。


P193

「しかし、その歴史を振り返ると、ウンコは中世には「畏怖」され、「信仰」され、近世・近代には「重宝」され、「売買」され、「利用」され、近代・現代には「汚物」と名づけられて「処理」され、「嫌悪」され、その結果「排除」され、そして「忘却」されつつ、今日に至る。」


<資料編>



















































































[ひとり「広島掃除に学ぶ会] 2月15日(月)~2月19日(金) 

 写真撮影が不良で写真なし。

今週は有給があったり、車で送ってもらったり、バイクで通勤したりして、2日しかできませんでした。

来週から、もう一度一から出直します。

[惹句どんどん] 三好春樹(理学療法士)


 
「今日、どう食べるのか、ということの中に自己実現はあるのです。今日、どう排便するかの中に自己実現があるのです」


三好春樹著『ウンコ・シッコの介護学』より

湯澤規子著『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』(ちくま新書、2020年)より孫引き。


三好 春樹

1950年広島生まれ。血液型はA型。

「オムツ外し学会」や「チューブ外し学会」を立ちあげて介護、看護、リハビリの枠を超えて日本全国で 「生活リハビリ講座」を開催し、介護に当たる人たちに人間性を重視した老人介護のあり方を伝えている。 広島修道高等学校中退。1974年から、特別養護老人ホームで生活指導員として勤務後、文部省大学入学資格検定を経て、九州リハビリテーション大学校で学び、理学療法士として老人介護の現場で老人のリハビリテーションに従事する。

1985年、広島に事務所を立ち上げ、東京、大阪、広島で「生活リハビリ講座」を開始。その後、事務所は、東京に移転、生活とリハビリ研究所と銘打ち、講座も札幌から沖縄までと拡大。「おむつ外し学会」、「チューブ外し学会」などを立ち上げるなど、聴講者や仲間もリハビリから介護、看護師、医師までに広がって、介護福祉の世界の新しい潮流を切り開いた第一人者。生活障害、関係障害など、新しい視点の提言も積極的に行っている。

http://www.e-kaigonavi.com/user_data/miyoshi.php

[積読立読斜読]『英文法再入門』(澤井康佑著、中公新書、2021年) 第6講 疑問文―正しく分類することの尊さ

 


スローリーディング中の『英文法再入門 10のハードルの飛び越え方』(澤井康佑著、中公新書、2021年)、本日は「第6講 疑問文―正しく分類することの尊さ」です。


疑問文には①yes-no疑問文、②疑問詞疑問文、の2つに分けることができますが、②疑問詞疑問文、の作り方で混乱します。著者は疑問詞疑問文を9パタンに分類し、それぞれ平叙文→疑問文、の作り方のステップを解説していきます。


中学・高校の英語の授業では、この分類まで詳細に解説できず、あいまいなまま疑問文が苦手になっています。英会話でも疑問文がスラスラ出てくると会話に不自由しないので、しっかり学びたいところです。


下記は当方のメモですので、他の人が読んでもわかりません。あしからず。





<設問>

[英訳]

(1)本屋はどの階にありますか。

Which floor is the bookstore on?

On which floor is the bookstore?


(2)彼は何について話をしているのですか。

What is he talking about?

About what is he talking?


(3)私は彼が病気かどうかを知らない。

I don't know whether he is sick.



[誤りの訂正]

(1)What should I do is a big problem.

→What I should do is a big problem.


(2)I don't know when did he come here.

→I don't know when he came here.



P136

Yes、No 疑問文


[手順1] 文を「do, does, did (助動詞)を加えた形」にする

[手順2] do, does, did をS(主語)の前に出す



[例文]


John likes dogs.

→John does likes dogs.

→Does John like dogs.(*likes は原形のlikeに変化)



P138

疑問詞疑問文の分類


平叙文にある尋ねる対象によって9パタンに分類できる


①S(主語)

②C(補語)

③O(目的語)

④O(前置詞の目的語)

⑤名詞修飾語

⑥出来事/状態の場所、時、方法、理由

⑦形容詞の程度

⑧副詞の程度

⑨C(形容詞)



①S(主語)

[手順]尋ねたい部分をwho, what, which に変える


人:who

人・物事:what

選択:which



[例文]

Tom died.

→Who died?


An accident happened here yesterday.

→What happened here yesterday?


Brown bread is better for you.

White bread is better for you.

→Which is better for you?



②C(補語)(Cは名詞)


[手順1]尋ねたい部分をwho, what, which に替える

[手順2]who, what, which を文頭に移動

[手順3]

3の[手順1] 文を「do, does, did (助動詞)を加えた形」にする

3の[手順2] do, does, did をS(主語)の前に出す

3の[手順3]be動詞/助動詞を文頭に出す



She calls him Joe.

→She cals him what.

→What she calls him.

→What she does call him.

What does she call him?



③O(目的語)

[手順1]尋ねたい部分をwho, what, which に替える

[手順2]who, what, which を文頭に移動

[手順3]

3の[手順1] 文を「do, does, did (助動詞)を加えた形」にする

3の[手順2] do, does, did をS(主語)の前に出す

3の[手順3]be動詞/助動詞を文頭に出す

*whoだけでなく、whomも用いられる

「②C(補語)(Cは名詞)」とほぼ同等


Lisa bought a watch.

→Lisa bought what.

→What Lisa bought.

→What Lisa did buy.

→What did Lisa buy?




④O(前置詞の目的語)

[手順1]尋ねたい部分をwho, what, which に替える

[手順2]who, what, which を文頭に移動

[手順3]

3の[手順1] 文を「do, does, did (助動詞)を加えた形」にする

3の[手順2] do, does, did をS(主語)の前に出す

3の[手順3]be動詞/助動詞を文頭に出す

*whoだけでなく、whomも用いられる

*手順2において「前置詞+疑問詞」を文頭に移動させることもある

この場合はwhom, what, whcihを用い、whoは用いない


※「前置詞がらみはご一緒に」(暗記すべき英文法フレーズ)



Bob heard the rumor from Meg.

→Bob heard the rumore from who.

→Who Bob did hear the rumore from.

→Who did Bob hear the rumore from?

or From whom did Bob hear the rumor?



⑤名詞修飾語

名詞の修飾語の部分を尋ねる


[手順1]尋ねたい部分をwho, what, which に替える

[手順2]「who, what, which +名詞」 を文頭に移動

[手順3]

3の[手順1] 文を「do, does, did (助動詞)を加えた形」にする

3の[手順2] do, does, did をS(主語)の前に出す

3の[手順3]be動詞/助動詞を文頭に出す


*1 whose, what, which に修飾されている名詞がS(主語)であれば[手順1]

で終わり

*2 whose, what, which に修飾されていう名詞が前置詞のO(目的語)である場合は、「前置詞+whose, what, which+名詞」を移動させることもある



「名詞修飾語はさびしんぼう」

「主語がらみはそのまま」

「前置詞がらみはご一緒も」


This is his bag.

Whose bag is this?


The bookstore is on this floor.

→Which floor is the bookstore on?

→On which floor is the booksore?

(限られた範囲から尋ねるのでwhichを用いる)



⑥出来事/状態の場所、時、方法、理由

平叙文の主語・目的語・補語などの特定の語ではなく平叙文で示されていない情報を尋ねる


[手順1]文頭にwhere, when, why, howを置く

[手順2]be動詞/助動詞またはdo, does, did をSの前に出す


Tom met the singer.

→Where/When/Why/How did Tom meet the singer?




⑦形容詞の程度

形容詞のはたらきの違いで疑問文が違う


①名詞修飾語

②補語



[手順1]形容詞の前にhowを置く

[手順2]①形容詞が名詞修飾語である場合

「how+形容詞+名詞」を文頭に出す

②形容詞がC(補語)である場合

「how+形容詞」を文頭に出す

[手順3]

3の[手順1] 文を「do, does, did (助動詞)を加えた形」にする

3の[手順2] do, does, did をS(主語)の前に出す

3の[手順3]be動詞/助動詞を文頭に出す


*形容詞が名詞修飾語である場合で、その名詞がS(主語)である場合は、[手順1]だけで終える


Meg is happy.

→How happy is Meg?


Lisa drank much water.

→How much water did Lisa drink?


Many people saw the bird.

→How many people saw the bird?



⑧副詞の程度

[手順1]副詞の前にhowを置く

[手順2]「how+副詞」を文頭に移動させる

[手順3]

3の[手順1] 文を「do, does, did (助動詞)を加えた形」にする

3の[手順2] do, does, did をS(主語)の前に出す

3の[手順3]be動詞/助動詞を文頭に出す


Jack runs fast.

→How fast does Jack run?



⑨C(形容詞)

[手順1]尋ねたい部分にhowを置く

[手順2]howを文頭に移動させる

[手順3]

3の[手順1] 文を「do, does, did (助動詞)を加えた形」にする

3の[手順2] do, does, did をS(主語)の前に出す

3の[手順3]be動詞/助動詞を文頭に出す


Your weekend was miserable.

→How was your weekend?



P152

疑問文の応用編


名詞節

(節=文のことです。文とは 主語と動詞 を持った構造のことです。 ですから、名詞節とは文が名詞の役割を果たすものです。)


従位接続詞

  主節と従属節を結ぶ働きをする接続詞のこと。主節とは文の中心となる主要な節で、 従属節はその主節に対し名詞節、形容詞節、副詞節の働きを持って意味を付加します。



[従位接続詞の種類]

①後ろ(節)をまとめて1つの名詞の働きにするもの

   名詞節を導く従位接続詞は that, if, whether の 3 つがあり、名詞の働きをするため文中で主語・補語・目的語となります。


②後ろ(節)をまとめて1つの名詞修飾語にするもの

形容詞節を導く従位接続詞とは関係詞のことをいいます。関係詞の直前にある名詞 ( = 先行詞 ) を従位接続詞で修飾します。

関係代名詞、関係副詞


③後ろ(節)をまとめて1つの動詞修飾語にするもの


副詞節を導く従位接続詞

   従位接続詞によって導かれた副詞節は、時・場所・原因・理由・目的・結果・程度・条件・譲歩・比較 などを表します。従位接続詞には when, where, while, as, since, because, if, after, before, until, till などがあります。


P157

yes-no疑問文を名詞節にする場合

whether


疑問詞疑問文を名詞節にする場合

文頭にある疑問詞が従位接続詞になる


名詞節になると文頭にある助動詞・be動詞・do,does,didは平叙文の状態に戻る


I don't know wheter he is sich.













2021年2月18日木曜日

[あの頃のレコード](特別編)ビートルズ全曲制覇プロジェクト "Help!" (1965)

 

「あの頃のレコード」特別編。ビートルズ213曲をレコードで聴く。

今回は"Help!"(1965)です。このままのペースだと半年ぐらいで終わりそうなので、ちょっとペースを落とします。


2作目の映画"Help!"のサントラの位置づけ。A面がサントラ、B面が新録音のアルバムです。


前作"Beatles For Sale"(1964)まではジョンのロックンロールをメインにアルバムとしてはバランスが取れていた感じがしますが、本作"Help!"ではポールの曲が素晴らしく、ジョンとポールの作品と、カヴァー曲、ジョージの2曲との差がありすぎ、アルバムとしては散漫な感じがしますが、レベルが低いわけではなく、有名曲が満載です。人気バンドとしてのアルバムではなく、唯一無二のビートルズのアルバムなのでしょう。アイドルとしてライブも、映画撮影も、レコードの録音も、おそらくは超人的な忙しさの中での質の高さ、やっぱりビートルズです。

録音機材がよくなったのか、音にぐっと厚みが出ました。「"Yesterday"を含むアルバム」にならないところがすごいですね。

1965年から4トラックで録音が本格化し、"Yesterday"の弦楽四重奏バックが実現するのですが、ポールが後からギターを入れたりする、不協和音が出始めたのも、これが遠因だそうです。


A2

"The Night Before"はポールの曲。後年のウィングスのレパートリーのような曲です。


A3

"You've Got To Hide Your Love Away"はジョンがボブ・ディランの影響下で作った曲だそうです。


A5

"Another Girl"もウィングスぽいポールの曲。ジョージのリードが不採用でギターはポールだそうです。


A6

"You're Going To Lose That Girl"はジョンの曲。ジョンのリードヴォーカルにポールとジョージが後追いでコーラスをかぶせる軽快なナンバーです。


B5

"I've Just Seen A Face"

ポールがライブでアコースティックギター演奏する曲です。早めのカントリー&ウエスタン調の曲。


カヴァー曲がいまいちですがラストの"Dizzy Miss Lizzy"のイントロのギターは捨てがたいです。



[積読立読斜読]『英文法再入門』(澤井康佑著、中公新書、2021年) 第5講 受動態 発想の違いが引き起こす困難 


 スローリーディング中の中公新書『英文法再入門』(澤井康佑著)。本日は「第5項 受動態」を読みました。


受動態が苦手な日本人


(1)簡単な第3文型の受動態なら「能動態→受動態」への書き換えはできるが、第4、第5文型、第3文型でも副詞句が加わると混乱する。


(2)日本語では能動態でも英語では受動態の形をとる動詞がある。



付録として、以前に学習した英文法書『表現のための実践ロイヤル英文法』「暗唱例文300」のうち、受動態の項目と、ネットから拾った第3文型+副詞句の動詞、を参照してください。


「受動態」「日本語では能動態でも英語では受動態」「英語では能動態でも日本語では受動態」と一筋縄ではいきません。日本語・英語の発想の違い(動詞)として興味深いところです。














[付録]

2014年9月30日火曜日

[積読立読斜読] 『表現のための実践ロイヤル英文法』「暗記例文300」 その5 受動態


https://28minami-owaki.blogspot.com/2014/09/blog-post_54.html


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【3】文型3* : S + V3* + O + A

「3項動詞 動詞の中にはS, OのほかにAを補部として要求するものがある。たとえば、putという動詞は、put(x, y, z)「xがyをzに置く/入れる」のような項構造をもつ3項動詞(three-place verb)である。いかなる言語においても、x, y, zという三つの参与項(participant)が揃わないと、「put/置ク」という行為は成立しないのである。その意味で、項構造は言語普遍的である。」(安藤 79)

put: John put the car in the garage.

give: She gave the book to me.

make: Mother made an omlet for me.


give型動詞

award: They awarded the first prize to John.

lend: Ted won't lend money to anyone.

その他 offer; owe; pass; pay; read; send; sell; tell; show; write など。


buy型動詞 <受益者>を表すAがfor-phrase として現れる。(安藤 82)

buy: I've bought some chocolate for you.

choose: She chose a red dress for her daughter.

make: Mother made an omlet for me.

その他 get; play; leave; bring; saveなど。


「移動動詞(verbs of movement)」

put: Roy put the key in the lock.

hang: Jill hung a picture on the wall.

その他 take; get; pay; convey; move; show など。


「告知動詞(notice verb)」

speak: She speaks German to her husband.

explain: I exlained my difficulty to him.

admit: He admitted his guilt to the police.


inform, notify(告知する)、remind(思い出させる)、apprise/advise(通知する)は、「+人+about/of(事柄)」の構造をとる。(安藤 85)

inform: He informed me about/of his father's death.

remind: But this room reminds me about/of Charlotte.

その他 notify; advise


詳しくは安藤貞雄著,『英語の文型』( 2008, 開拓社)をご覧ください。


http://duffer1056.blog79.fc2.com/blog-entry-265.html?sp


[惹句どんどん] 谷崎潤一郎『蓼喰う虫』より

 


成るほど、人形浄瑠璃と云うものは、
妾の傍で酒を飲みながら見るもんだな。


スローリーディング中の谷崎潤一郎『蓼喰う虫』より。


妻の愛人を許容し仮面の夫婦を続ける夫。妻の父親とその若い愛人と人形浄瑠璃を観劇して。

「妾」の存在とともに人形浄瑠璃も去ってしまうのでしょうか?

[積読立読斜読] 『この世界の片隅に(中)』(こうの史代著、双葉社、2008年) 第13回 昭和19年8月

 スローリーディング中の漫画原作『この世界の片隅に(中)』。

本日は「第13回昭和19年8月」を読みました。

誤って砂糖を飲料須に溶かしてしまったすずさん。お姑さんからへそくりをもらい、配給停止となったので闇市で入手しようとしますが、一斤20円(配給価格の60倍)という価格に驚きます。

ここですずさんは作中初めて、総力戦下の国民生活の悲観的な将来を実感することになります。呆然としたすずさんは道に迷ってしまい、遊郭地区に迷いこんでしまいます。








配給制度  

はいきゅうせいど 


日中戦争の泥沼化にともない,日常生活物資が不足してきたためにとられた制度。第1次大戦中のドイツで行われた例がある。戦争遂行のために軍需品を中心とする生産力拡充を強行した結果,日常生活必需品が極度に不足してきた。政府は輸出入品等臨時措置法や国家総動員法によって経済統制にふみ込んでいたが,さらに消費部門での統制を行うため,1938年3月には〈綿糸配給統制規則〉(最初の切符制),6月には〈綿製品の製造制限に関する件〉を出し,綿製品の製造・販売を規制した。また39年には,いわゆる9・18停止令が出され,国内のすべての商品価格は9月18日の水準以下に抑えられた。しかし日常生活物資はすでに大幅に不足していたので,闇取引はかえって増加し,闇価格も急騰した。そのため政府は急きょ,生活必需物資を切符制による配給によって行うこととした。まず40年6月に六大都市で砂糖とマッチが切符制になった。41年4月には米穀,42年1月にはみそ,しょうゆなどが相次いで配給制に切り換えられた。配給機構の整備はそれぞれの都市の状況によって異なっていた。大阪市ではすでに42年2月から生鮮食料品を中心とした総合販売所が設けられていた。名古屋市でも同年12月から導入された。東京では44年8月になってやっと青果,魚介,保存食品,調味食品,食肉の総合配給所が設置され,実情に即した計算方式による総合配給制度が実施された。


 配給制度の円滑な実施の成否を握っていたのは,町内会,隣組である。政府は切符制導入を決定したものの,個々の該当者を調査し,配給量を決めたうえで切符を交付するために,行政機構を格段に充実する余裕をもたなかった。そのかわりの機関として,町内会,隣組に期待が寄せられたのである。配給事務はすべて町内会に持ち込まれ,町内会は防空や防火,衛生などの仕事に加えて,膨大な配給事務をかかえこんだ。町内会長はこの業務を引き受けることによって,町内住民の日常生活に介入することができるようになり,逆に住民のプライバシーは極度に制限されてしまった。しかし,このような配給機構の格段の整備にもかかわらず,43年ころになると配給量そのものの不足が目立ちはじめた。人々は配給のみでは生存さえ脅かされるようになり,家族ぐるみでの買出しに精を出さざるをえなかった。そのようすを徳川夢声は《夢声戦争日記》第3巻のなかで,〈一体全体日本の国民で,ヤミというものから全然無関係で生活しているものがあるか,ない,絶対にないと思う。ただ程度の差である〉と述べている。配給制度は,日常生活物資の絶対的不足のなかで急速に制度化され,部落会,町内会の強化に役立ったが,その矛盾も大きかったといえよう。戦中から戦後にかけて,配給物資の不足は最高潮に達し,国民の飢餓生活が続いた。49年以降,徐々に統制は撤廃された。          芳井 研一


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