2019年10月24日木曜日

[積読立読斜読] ジョン・チーヴァー『巨大なラジオ/泳ぐ人』より 「ああ、夢破れし街よ」(O City of Broken Dreams)

・[積読立読斜読](つんどくたちよみななめよみ)は自分の読書メモです。
・村上春樹さんのデビュー以来からのファンで翻訳書も読んでます。
・ジョン・チーヴァーは1950年代雑誌『ニューヨーカー』で活躍した短編小説家で"The Stories of John Cheever"(短編61編を収録)で1979年のピュリツァー賞受賞、日本ではよほどの英文学好きでないと知らない作家かも知れません。
・日本語版『巨大なラジオ/泳ぐ人』(2018年)はそのうち短編18編、エッセイ2編を村上春樹が選び訳した選集です。


一度に読んで一度に読書メモを書く体力がないので、一編ずつ読んでその都度感想文のようなものを書いてます。

本日は「ああ、夢破れし街よ」(O City of Broken Dreams)(『ニューヨーカー』1948年1月24日号掲載)。

チーヴァーの短編は郊外に住む白人アッパーミドルの憂鬱(ミドルからの転落または転落の危機)を描いたものがほとんどのようですが、本編は珍しくお上りさんの戯曲家で本職はバスの運転手という設定です。

中西部の田舎町から未完成の戯曲作品を持って一旗揚げようと一家でニューヨークに乗り込んできた夜間バスの運転手一家。海千山千のニューヨークのショービジネス関係者に翻弄されるというコメディー仕立ての短編です。すでのニューヨーク在住でミドルクラスに昇りつめたものから見れば揶揄の対象となる人物ですが、そのニューヨーカーですら出所は変わらずという二重の諧謔になっています。

P43
マーチソンの客たちが彼女の音楽に対して払っている敬意と関心を、エヴァーツは感じ取ることができた。彼らの多くはウェントワースとさして変わらない小さな田舎町の出身者だった。みんな素朴な心を持った人々であり、アリスの臆しない声から醸し出されたシンプルな調べは、彼らに出所を思い出せた。

とあるパーティー運転手の妻アリスが皆の前で「アニー・ローリー」を歌う場面です。あまりにも真面目に演じたため最後は皆の嘲笑をかってしまいます。

最後のヒネリが意外で思わず「うまいなあ」と唸りました。