2015年3月7日土曜日

[積読立読斜読] 『モルテンおいしいです^q^』(田辺青蛙著,廣済堂出版、2015年)



書店内を徘徊中、書名に惹かれて購入・読了。

ホラー作家の田辺青蛙(たなべせいあ)さんと夫氏(書中では氏名がありませんが芥川賞作家の円城塔さん)のアメリカ珍道中記。初出は廣済堂出版のWEBに連載。残念ながら当方は不勉強でお二人の著作は読んだことがありません。

書名の『モルテン おいしいです』は童話『ニルスの不思議な旅』の飛ぶガチョウ。将来の移動手段を目先の空腹から食してしまい、夫婦珍道中の行き当たりばったり感を象徴しているとして、夫氏の命名によります。

旅はシカゴでのSFイベントに参加後、単に乗ってみたかったというアメリカ横断鉄道でサンフランシスコに移動、アパートを借りて三か月を過ごすという日程です。夫婦とも国際免許を取らず、アメリカ滞在記にしてはめずらしく公共交通機関でのみの移動ですが、淡々とした記述の中に諧謔性があり、なんでもないエピソードも心温まるものでよかったです。

当方は仕事の関係で家族で5年、サンフランシスコ郊外に暮らしていたことがあり、また会社からの派遣留学中にニューヨークからサンフランシスコまでレンタカーで横断したことがあるので、作中の記述は珍しいものではありませんでしたが、夫婦の何気ない日常を作家らしい突き放したような客観性で見つめる筆致はさすがです。圧巻は結婚式を正式に挙げてなかった二人がナパで挙げた結婚式の様子。ほのぼのとして感動しました。おめでとうございました。


田辺青蛙さんは細面の美形な方ですが、結構大食家のようで、食事に関する記述が多く、巻末にはサンフランシスコのレストラン・ガイド(夫婦でよく利用されたレストラン)もついてます。

夫氏との会話を色分けしたり、デジタル写真をポラロイド風に加工したりと、"komeworks"社による本文デザインも秀逸でした。

(作者はサンフランシスコで何かの会社で仕事をしていたらしいのですが、作中では具体的には不明でした)。