『昭和歌謡史 古賀政男、東海林太郎から、美空ひばり、中森明菜まで』(刑部芳則 (おさかべよしのり)著、中公新書、2024年)
著者は1977年生まれ、日本近代史が専門、日大商学部教授。同じ中公新書でNHK朝ドラ『エール』で主人公になった『古関裕爾』(2019年)を執筆されてます。
新書で400ページ近い労作。ほぼ編年体で最終的な個別の「曲」を考察していくという手法で資料的な価値は高いのかもしれませんが読んでいて面白くなく残念です。
紙面の関係で曲の時代背景の記述が少なく、年表がなく、索引もありません。またマスメディアの発展と、曲の媒体(SP、EP、CD、ネット)、国民所得の変遷、等が歌謡曲の盛衰に大きく関与しているはずですが、この記述はありません。
おそらく著者は楽器をされたない方だと思われます。レコード会社専属の作詞家・作曲家による曲の制作から、ニューミュージック系のアーティストによる影響も大きかったと思われますが、大瀧詠一、松本隆らによる、はっぴいえんどの影響の記述が一切ありませんでした。残念です。
画像(wikipedia)は当方が中学3年生であった1973年の紅白歌合戦のものですが、あまり熱心な歌謡曲ファンではない当方でも、現在でもほとんどの曲を口ずさむことができます。現在の中学3年生は後年流行歌の歴史を振り返ってみて同じような状況にはならないでしょう。歌謡曲が時代と同時に流れていた、まさに流行歌≒歌謡曲の時代でした。この理由の深堀がほしいところです。
2~3トリヴィア的な知識を得た以外は収穫がありませんでした。
<内容紹介>
日本人の心を躍らせ、泣かせてきた昭和の歌謡曲。その礎は中山晋平、西條八十が築き、三大作曲家の古賀政男、古関裕而、服部良一によって確立する。時代は戦争、敗戦と復興、高度成長へと進み、視聴手段もレコード、ラジオからテレビへと変化する。本書は作詞家、作曲家、歌手らが残した膨大な史料を用いて実証的に考察。数々の名曲が生まれた背景とその特徴を炙り出す。人はなぜ昭和歌謡に魅了されるのか。
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2024/08/102818.html
<著者プロフィール>
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
刑部 芳則(おさかべ よしのり、1977年[1] - )は、日本の日本史学者。専門は日本近代史、昭和歌謡史にも精通する[1]。日本大学商学部教授[2]。東海林太郎音楽館学術顧問[3][4]。
人物
東京都生まれ[1]。2010年中央大学大学院文学研究科博士課程修了[1]、「明治国家の服制と華族」で博士(史学)[5]。2003年日本風俗史学会研究奨励賞[6]。
NHK大河ドラマ「西郷どん」(2018年)で軍装・洋装考証[3]、連続テレビ小説「エール」(2020年度前期)[1][3]および「ブギウギ」(2023年度後期)[7]では風俗考証、「虎に翼」(2024年度前期)では制服考証(戦前期の判事・検事・弁護士の法衣など)[8]を担当した。
<目次>アマゾンより
■本書の目次
はじめに
序章 昭和歌謡の夜明け前
「流行歌」と「歌謡曲」/「昭和歌謡」とは何か/中山晋平が築いた基本形態/西條八十の改心/「流行歌作りの天才」古賀政男/国民的作曲家・古関裕而/服部良一は日本ポップスの元祖/レコード産業の勃興―外資系と国産会社―
コラム1 古賀メロディーは「演歌」ではなく歌謡曲
第一章 昭和歌謡の夜明け――昭和三年~一三年(一九二八~三八)
流行歌手第一号・佐藤千夜子/「東京行進曲」をめぐる論争/芸者歌手第一号・藤本二三吉/オペラ華やかな時代の歌手たち/藤山一郎の登場/現実を直視した歌と逃避した歌/時局を色濃くあらわした歌謡曲/柳を愛した西條八十/天才がライバル視した江口夜詩/苦労する古関裕而と服部良一/松平晃とミス・コロムビア/芸者歌手/小唄の女王・小唄勝太郎の人気/「東京音頭」フィーバー/「大阪音頭」で対抗するコロムビア/「大名古屋祭」から始まる地域振興の行進曲/豆千代と音丸/天才に対抗する佐々木俊一/東海林太郎の登場/スカウト歌手の小野巡/楠木繁夫の活躍/デュエットソングの登場/藤山一郎と古賀政男の再会/ジャズで歌謡曲を歌うディック・ミネ/内務省が敵視した甘い歌声/「ねぇ小唄」の流行と取締り/「トンガリ五人組」の明暗/上原敏の活躍と「やくざもの」の位置づけ
コラム2 芸能界を追放された初の歌手・橋本一郎
コラム3 流行歌によって変わった童謡
コラム4 昭和歌謡と韓国歌謡とは兄弟
第二章 戦時歌謡――昭和一二年~一五年(一九三七~四〇)
戦時歌謡が流行った時代/ブルースの女王・淡谷のり子/戦線と故郷をつなぐ心の絆/戦時下の母と子を歌った「母もの」/泥沼化する戦線の「たよりもの」/戦場の風景を描いた「兵隊もの」/「軍歌の覇王」古関裕而の人気急上昇/「愛国行進曲」から盛り上がる国民歌/大衆が涙を流す「父よあなたは強かった」/映画『愛染かつら』の主題歌「旅の夜風」の大ヒット/「流行歌作りの秀才」万城目正の活躍/服部良一の斬新なメロディー/ラジオでヒット曲が流れる頻度は少ない/ヒット曲は街のなかから聞こえる/歌う映画女優・高峰三枝子/上海ブームと花売娘と踊り子/苦労したイケメン歌手・伊藤久男/灰田勝彦のヒットと受難/中国大陸の戦地から流行した「誰か故郷を想はざる」/日本が建国されて二六〇〇年の奉祝ブーム/流行歌界の栄枯盛衰/服部メロディーに見る「本音」と「建て前」/戦争遺家族に送る鎮魂歌「戦場初舞台」/開戦前のモダニズムの輝き
第三章 暗い戦争と明るい歌謡曲――昭和一六年~二〇年(一九四一~四五)
国策を重視し、大衆性から離れる/スパイに注意せよ/皇族たちも楽しんだ「瑞穂踊り」/戦時経済や生活を題材にした作品/意外にも少ない発売禁止/ビクターのヒット戦略/日本文化の「舞踊歌謡」というカムフラージュ/服部良一は戦時歌謡を作らなかった?/古賀メロディーの明朗路線の魅力/太平洋戦争中のヒット曲/古関裕而のヒットの秘訣/幻のレコード「同期の桜」/新譜よりも愛される旧譜
第四章 戦後復興の歌声――昭和二〇年~三三年(一九四五~五八)
忘れられたヒット曲と生き残ったヒット曲/生き残った国民の生きる希望/復員船が港につく光景/米兵に体を売る女性たち―一億総懺悔の歌―/平野愛子の明さと暗さとが交わるブルース/岡晴夫の花売娘、パラダイス、小鳩シリーズ/ブギの女王・笠置シヅ子/終戦後の世相を反映した「ズルチンボーイ」/遅咲きの近江俊郎と古賀メロディーの復活/シベリア抑留生活を支えた歌/長崎にザボン売りはいなかった/ハワイへの憧れ/青い山脈/天才少女歌手の登場/リルを探して三千里/NHK『紅白歌合戦』の放送開始/渡辺はま子の歌声が救った一〇八名の命/二つのワルツ―洋楽と邦楽のせめぎ合い―/歌手人生をかけた「赤いランプの終列車」/「野球けん」ブーム/歌舞伎から生まれた「お富さん」と「与三さん」/シベリア抑留という戦争の傷跡/戦争の傷跡を背負った子供たち
第五章 歌謡曲の新旧交代――昭和三〇年~三九年(一九五五~六四)
望郷歌謡/「ふるさと路線」の王者・三橋美智也/職業歌謡/吉田正と都会派のムード歌謡/男女の発展場と別れのシーンの変化/島倉千代子の作品変化/第一回レコード大賞―歌謡曲の新旧交代―浪曲の終焉/和製ポップスと外国曲のカバー/西田佐知子の記憶に残った歌/御三家と青春歌謡/遠藤実と歌謡曲の変化/市川昭介と歌謡曲の変化/「演歌」を生んだ船村徹/オリンピック東京大会と「東京五輪音頭」
コラム5 音頭はイベントの定番曲
第六章 歌謡曲の細分化――昭和四〇年~四九年(一九六五~七四)
歌謡曲の曲がり角/『なつかしの歌声』/『紅白歌合戦』に対抗する『なつかしの歌声・年忘れ大行進』/NHKの『思い出のメロディー』/昭和天皇の侍従も見た「年忘れ」と「紅白」/「軍歌ブーム」と消えていく戦時歌謡/懐メロのカバーでも「演歌」とそれ以外とに分離/グループ・サウンズの台頭/ムード歌謡/ご当地ソング/ピンク映画とアダルト歌謡/任侠映画と「演歌」/学生運動の若者と中高年から支持される「演歌」/なかにし礼の戦争体験から生まれた/「希代のヒットメーカー」筒美京平/阿久悠の登場/結婚生活と同棲生活との新旧価値観
コラム6 委託盤の帝王と女王―三鷹淳とわかばちどり―
コラム7 ホステス歌謡とホステス歌手
第七章 歌謡曲の栄光から斜陽――昭和五〇年~六三年(一九七五~八八)
不滅と思われた歌謡曲の行方/テレビの普及とレコードの拡大/『スター誕生!』と『君こそスターだ!』/こんなにもあった賞レース/山口百恵のスター性/キャンディーズとピンク・レディー―踊る歌謡曲―/岩崎宏美の歌唱力/昭和歌謡の父・古賀政男の逝去/歌謡曲に近づくニューミュージック/名編曲家の萩田光雄と船山基紀/どこからが「演歌」、どこからが歌謡曲/歌謡曲・演歌・ニューミュージックの分離/シティーポップの不思議な新鮮味/シティーポップに哀愁はないか?/「演歌」に組み込まれた歌謡曲/ポップス寄りの歌謡曲と「演歌」寄りの歌謡曲/アイドルに生き続けた歌謡曲
コラム8 よく聴くとそっくりな歌
コラム9 渡辺宙明、水木一郎、堀江美都子の特ソンとアニソン
終章 昭和歌謡は輝いている
1990年のJ-POPという大波/昭和歌謡番組とショーレースの終焉/歌謡曲が枝分かれした結末/筒美京平の限界/阿久悠の「昭和歌謡」への想い/ニューミュジックも歌謡曲に聴こえてしまう/歌謡曲は健在
あとがき
参考文献
註
























