新聞に書評が載っていたので、久しぶりに桐野夏生さんの小説を読みました。
1970年代に「中ピ連」を率いた女性活動家・榎美沙子をモデルに、日本の男性による女性支配開放の先駆者を描いた快作です。
桐野さんの題材はあまり日常生活では触れられたくない心痛なものが多いのですが、実在の榎美沙子の現在の所在がわからないことを除けば、
モデルに対しては意外にも肯定的な書かれ方をしています。
小説の構成としては一人称語りとせず、30代の女性ルポライターが関係者からの証言を組み立てるという構成で、最後に未発掘の手記が見つかるという構成です。
女性が社会に対して闘わなくてもよい時代が早く来るとよいです。表紙は女性の生殖器を想像させ、気持ち悪いです。
桐野夏生さん新作「オパールの炎」 女性抑圧と国の生殖管理問う
2024/07/08 05:00
スクラップ
桐野夏生さん=写真=の新作『オパールの炎』(中央公論新社)は、1970年代、「女性の体は自分で管理すべきだ」と、当時未承認だったピルの解禁や中絶の自由化を過激な行動で訴えた女性を巡る架空のノンフィクション風小説だ。同じ行動を取った実在の女性を「肯定したい気持ち」が、困難な執筆に駆り立てた。
ピンクのヘルメット姿でデモなどを行い、不倫をした男性も糾弾する。中ピ連(中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合)などを率いた榎美沙子さんの言動は1973年頃から、世間を騒がせた。桐野さんは当時、米から広がった女性解放運動に関心を持つ大学生。「小気味いいし、先頭に立って運動していることを尊敬していた。途中から派手なことをして少し心は離れたけれど、今回その生涯を知りたくなった」
当初、評伝的小説を考えたが、日本女性党をつくり候補を立てた77年の参院選に敗れ、「家庭の主婦に戻る」と中ピ連を解散させて以降の足取りが分からない。元夫や幼なじみら3人には話を聞けたものの、それ以外は想像力を駆使。塙玲衣子という女性を探る「証言集」として小説化した。「(聞き手の)ライターは私みたいなもの。間違った推論はしたくないし、すごく苦労をして書きました」
科学的視点による女性解放運動に共鳴しながら、マスコミ受けを狙う戦略に失望した元同志、浮気糾弾で家庭が崩壊した父親の息子……「塙」を巡る証言は、国家が女性の性を管理する問題点や男女間の溝、女性解放運動内の対立も浮かび上がらせる。なぜ彼女が姿を消したのかという謎に迫りながら。「日本では国が生殖を管理するような期間が長かったし、女性への抑圧も激しい」という作家の問題意識も反映された。
中ピ連から半世紀。性犯罪被害をSNSで共有する#MeToo運動も広がっている。「当時、SNSがあったら、榎さんも色物扱いされるやり方をしなくても良かったかも。彼女の主張は正しかったし、大衆に受けるための情宣活動としてまじめにピエロをやったのでは」
「女性の体」を巡る作者の小説では、代理母出産がテーマの『燕は戻ってこない』もテレビドラマ化された。「面白いのは担当編集者がどちらも30代の女性なこと。そういうものを書いてほしいという若い世代の熱意を感じたし、私だけだったら少し違ったものになったかもしれない」(文化部 佐藤憲一)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/20240707-OYT8T50019/
読売新聞オンライン
