2022年12月21日水曜日

[積読立読斜読] 『久保田万太郎俳句集』(岩波文庫、2021年)(84)

亡き人に肩叩かれぬ衣がへ

 

時雨傘さしかけられしだけの縁




 「宮薗千之女子、重要無形文化財保持者に指定さる。

このこと、もう一年早かりせばと思ひしならむと、

その心のうちをおしはかりて」という長い前書きの809。


「たまたま逢ひし人の、名をだに知らず。」の前書きの814が印象に残りました。




流寓抄以後 その三


804 たそがれの雪の禮者となりにけり


805 三月や水をわけゆく風の筋


806 花冷えの雨にならんとしてなれず


807 花冷えの閉めてしんかんたる障子


808 亡き人に肩叩かれぬ衣がへ


809 老鶯(ろうあう)やいよいよ雨はくれけれど


810 さんま燒くけむりのなかの一人かな


811 水引のうまくむすべて小春かな


812 倅みてわかき日ばかりおもふめる


813 案のごとくしぐるゝ京となりにけり


814 時雨傘さしかけられしだけの縁


815 冬の虹湖の底へと退(しさ)りけり




学研全訳古語辞典

あん-の-ごとく 【案の如く】

考えていたとおり。思ったとおり。案の定。


出典平家物語 四・宮御最期

「あんのごとく宮は三十騎ばかりで落ちさせ給(たま)ひけるを」


[訳] 思ったとおり高倉宮は三十騎ほどの騎馬武者をつれてお逃げになったので。


なりたち名詞「あん」+格助詞「の」+比況の助動詞「ごとし」の連用形