2025年5月6日火曜日

[あの頃のレコード] 荒井由実『14番目の月』(1976年)



 1954年生まれの松任谷由実さん。御年71になられますが40作品目のアルバムを2025年秋に発表予定。今年は全国72のツアーを開催予定でますますお元気です。

アルバム『14番目の月』(1976年)は独身時代の荒井由実名義の最後のアルバムで、通算4枚目のオリジナル・アルバムです。同時代では全部聴いておらずアマゾンで中古盤を入手しました。

この作品からプロデューサーが松任谷正隆さんに代わり、サウンド的には初期のリリシズムから絢爛豪華なユーミン・ワールドへ変化しました。当方は初期の2作品が特に好みですが。

最近本屋さんで入手した『ユーミンと「14番目の月」』(ラッセ・レヘトネン著、平凡社、2025年)がその成り立ちを含め衝撃的で、題材となった『14番目の月』を紹介する次第です。



著者のラッセ・レヘトネンさんはフィンランドの日本研究学者。オリジナルは英語版の叢書「33 1/3」シリーズの一冊。内容は『14番目の月』そのものの解説を超えて、1970年代からの日本の音楽シーン、ジェンダー、サブカルチャーの大きな流れを俯瞰した日本学の良質な研究書になっています。


フィンランドのイメージは大多数の日本人が「ムーミン」しかないないでしょうが、インターネットの発達によって音楽が時空と地域を超えて共有できるようになり、70年代から80年代にかけての良質な日本の音楽を世界が「発見」し、

特に熱心なフィンランドの日本学者によって結実したのが本書の経緯です。


1枚のアルバムを深堀することによって「時代」が見えるのか。それぞれが検証できる素材を与えてくれたことに感謝します。





<内容紹介>

 今秋の40枚目のオリジナルアルバム発売と「72歳で72本」の全国ツアー開催を発表したばかりの、ユーミンこと松任谷由実。ユーミンが「荒井由実」名義で最後にリリースしたアルバム『14番目の月』(1976年)。ユーミンのアルバムでは初めてオリコン1位を獲得した代表作のひとつであり、ドライブに欠かせない名曲として今でも多くのひとがその名を挙げる「中央フリーウェイ」や、現在でもユーミンのコンサートに欠かせない表題曲など、人気の楽曲を多数収録しています。


本書は、このアルバムの楽曲分析を中心に、「荒井由実」時代のユーミン、女性シンガー・ソングライターを中心とした同時代のミュージシャンたち、そしてそのころ勃興していたウーマンリブ(第2次フェミニズム運動)などとの関わりを論じます。


 著者は、フィンランドで活躍する日本音楽研究者のラッセ・レヘトネン。日本語が堪能な著者の監修のもと、ポピュラー音楽研究者の新鋭として活躍するふたりの研究者、加藤賢とアニータ・ドレックスラーが訳し下ろしました。


 著者は「日本の読者へのまえがき」で以下のように述べています。


「ユーミンの膨大なディスコグラフィーの中から『14番目の月』をチョイスしたことは、ファンの方々にとって意外なことかもしれない。しかし、私がこのアルバムを選んだのは、そのオリジナリティと音楽的バラエティに加えて、本作が歴史的にみて興味深い時期に発表されているからである。この時期を見つめ直すことは、ユーミンのキャリアや日本のポピュラー音楽に特別な視点をもたらすとともに、私たちの時代を再考することにつながる。事実、このアルバムによってもたらされる観点は、今日のリスナーである私たちにとって、驚くほど同時代的なものである」


 現在世界的人気を集めている「ジャパニーズ・シティポップ」のさきがけであるユーミンと『14番目の月』を論じた本作。ぜひご関心をお寄せください。


■著者ラッセ・レヘトネン氏からのメッセージ

 「本書の翻訳が、日本の読者のみなさんに、ユーミンの作品と日本のポピュラー音楽に関する新たな発見をもたらすことを願っています。」


■著者プロフィール


ラッセ・レヘトネン(Lasse Lehtonen)


1986年フィンランド生まれ。日本音楽研究者。フィンランド学士院研究員、ヘルシンキ大学文学部准教授(アジア研究および音楽学)。Ph.D.(ヘルシンキ大学)。東京大学、東京藝術大学客員研究員、などを歴任。ポピュラー音楽、現代音楽からゲーム音楽まで、日本の音楽を幅広く研究。2022年にフィンランド若手アカデミーのメンバーに選ばれ、2023年から会長。フィンランド音楽学会、フィンランド・日本協会、フィンランド日本語・日本文化教師の会の副会長も務めた。著書に、“March From the Age ofImitation to the Age of Creation”: Musical Representations ofJapan in the Work and Thought of Shinkō sakkyokuka renmei,1930-1940(博士論文)、Japanilainen musiikki: Taiko-rumpujenkuminasta J-poppiin(『日本音楽──和太鼓からJポップへ』、2021年度フィンランド民族音楽学会学術書賞受賞)。


■訳者


加藤賢(かとう けん)


1993年愛知県生まれ。大阪大学大学院文学研究科文化表現論博士後期課程在籍。専門はポピュラー音楽研究、文化地理学、文化政策学。主な論文に「渋谷に召還される〈渋谷系〉──ポピュラー音楽におけるローカリティの構築と変容」(『ポピュラー音楽研究』第24号)、共著として『シティポップとは何か』(河出書房新社)、『クリティカル・ワード ポピュラー音楽──〈聴く〉を広げる・更新する』『シティ・ポップ文化論』(以上、フィルムアート社)、The Life, Death, and Afterlife of the Record Store: A Global History(Bloomsbury Publishing)など。


アニータ・ドレックスラー(Anita Drexler)


1987年オーストリア生まれ。ウィーン大学大学院東アジア研究科修士課程修了。大阪大学大学院人文学研究科文化表現論博士後期課程在籍。研究テーマはニューミュージックの思想論。専門はポピュラー音楽研究、文化政治学、ジェンダー・クィア研究。主な論文にSada Masashi und seine Lieder(修士論文)、Furusato inNew Music(「ポピュラー音楽研究」第27号)、Gender playgroundor emancipated emotions?: Strategies of cross-gendered performanceby male-presenting, New Music-affiliated singer-songwriters(「阪大音楽学報」第20号)など。The Palgrave Handbook of Music andSound in Japanese Animation(Palgrave MacMillan)において翻訳および副著を担当。



全作詞・作曲: 荒井由実、全編曲: 松任谷正隆。

# タイトル 時間

1. 「さざ波 -Ripples-」 4:37

2. 「14番目の月 -The 14th Moon-」 3:27

3. 「さみしさのゆくえ -Where Does Loneliness Go-」 5:23

4. 「朝陽の中で微笑んで -In The Morning Light-」 5:22

5. 「中央フリーウェイ -Chuo Freeway-」 3:39

6. 「何もなかったように -Like Nothing Ever Happened-」 5:06

7. 「天気雨 -Sun Shower-」 3:05

8. 「避暑地の出来事 -A Summer Place-」 2:39

9. 「グッド・ラック・アンド・グッドバイ -Good Luck And Goodbye-」 3:44

10. 「晩夏(ひとりの季節) -Late Summer (The Lonely Season)-」 3:17


参加ミュージシャン

キーボード : 松任谷正隆

ピアノ : 荒井由実(#6)

ドラム : Mike Baird

スチールドラム : 細野晴臣

パーカッション : 斎藤ノブ

エレクトリック・ギター : 松原正樹、鈴木茂

アコースティック・ギター, バンジョー&12弦ギター : 瀬戸龍介

スティール・ギター : 駒沢裕城

ベース : Leland Sklar

コーラス : 山下達郎、吉田美奈子、大貫妙子、尾崎亜美、タイム・ファイブ、Corporation Three

ウッドウインズ:清水万紀夫、三森一郎、鈴木重雄、村岡健、砂原俊三

ホルン:沖田晏宏、伊藤泰世

ブラス:羽鳥幸次、数原晋、新井英二、平内保夫、岡田澄夫、三田治美

ハープ:山畑松枝

ストリングス:玉野嘉久&His Friends