176 種卸し種卸し婿と舅かな
177 春の江の開いて遠し寺の塔
178 手習や天地玄黄梅の花
179 奈良七重菜の花つづき五形咲く
180 草山や南をけづり麦畑
181 端然と恋をしてゐる雛かな
182 春風や吉田通れば二階から
183 登りたる凌雲閣の霞かな
184 想ひ出すは古白と申す春の人
185 家あり一つ春風春水の真中に
176~187まで句稿(その十四)にある句。
種卸し:種もみを苗代にまくこと。
種卸し婿:迎えたばかりの婿の意か。
天地玄黄:習字の手本として流布した『千字文』の第一句。
吉田:東海道五十三次の宿場。今の豊橋。「吉田通れば二階から招く。しかも鹿の子の振袖で」という俗謡があった。
凌雲閣:浅草公園にあった十二階の建物。明治二十三年の建造。
古白:自殺した子規の従弟、藤野古白。
