2024年3月30日土曜日

[積読立読斜読] 『漱石俳句集』(坪内捻典編、岩波文庫)明治二十九年


 176 種卸し種卸し婿と舅かな


177 春の江の開いて遠し寺の塔


178 手習や天地玄黄梅の花


179 奈良七重菜の花つづき五形咲く


180 草山や南をけづり麦畑


181 端然と恋をしてゐる雛かな


182 春風や吉田通れば二階から


183 登りたる凌雲閣の霞かな


184 想ひ出すは古白と申す春の人


185 家あり一つ春風春水の真中に


176~187まで句稿(その十四)にある句。


種卸し:種もみを苗代にまくこと。

種卸し婿:迎えたばかりの婿の意か。

天地玄黄:習字の手本として流布した『千字文』の第一句。

吉田:東海道五十三次の宿場。今の豊橋。「吉田通れば二階から招く。しかも鹿の子の振袖で」という俗謡があった。

凌雲閣:浅草公園にあった十二階の建物。明治二十三年の建造。

古白:自殺した子規の従弟、藤野古白。