2024年1月16日火曜日

[積読立読斜読] 『女二人のニューギニア』(有吉佐和子著、河出文庫、2023年)

 


雑誌名は失念しましたが本書の解説を書かれているエッセイストの平松洋子さんが復刊希望の文庫本として挙げて、河出書房の編集者の目にもとまったのか、意外な復刊。

オリジナルは1969年1月、朝日新聞社。文庫化は1985年朝日文庫。

解説によるとニューギニアへの紀行(よりも冒険に近い)に出かけたのは1968年。友人の文化人類学者・畑中幸子。ニューギニア高地人調査の原動力を自著で語っています。「われわれは高度な機械力の下で人間としての自主性を喪失し、個人の存在はかなり影の薄いものとなった。わたしの接してきたニューギニア高地人社会では、人々が機械に隷属することなく、人間の尊厳が十分に保たれていた。近代化に超スピードで向かっているとはいえ、文化に対する個人の比重はいまなお大きいものがある」(『われらチンプー ニューギニア高地人の生命力』(三笠書房、1974年)。本書解説より。

作家的想像力から畑中の誘いに乗ったものの、未開のジャングルを徒歩で移動しなければならず、ニューギニア高地のシシミンの狩猟民族がいるフィールド・ワークの地にやっとのことでたどり着いたものの、疲労で動けなくなった。偶然にも航路に迷ったSIL(聖書を各国語に訳す団体)の探索ヘリコプターに拾われ奇跡に単身日本に帰国する。

白人による近代文明が入ってからわすか7年、2年後には独立を控えた1968年のニューギニア高地の紀行記録は平松洋子さんの言葉を借りれば「稀有な文化誌」に違いありません。

奇跡的な帰国後、マラリアを発病し、これまた奇跡的に治癒した入院中の有吉のもとに見舞いに来た出入りの呉服屋の主人の言葉。

「ニューギニアだなんて、あんなところは、私たちは戦争だから、兵隊だから、命令で、いやいやながら行ったところですよ。折角戦争放棄をした日本で、兵隊にとられる心配のなくなった御時世に、遊びや冗談なんぞで出かけるところじゃありませんよ。私が知ってたら、絶対お止めしましたね、ええ。私はまた外国とばかり思っていたものだから」。

オリジナルの刊行から半世紀。現地では近代化が進み本書の内容のような狩猟民族の風俗は無くなっているものと想像されます。

それにしても作家の行動力、文化人類学者の行動力には敬服します。