2014年11月1日土曜日

<日々是不穏 like a rolling stone>(2014年11月1日(土)) 日銀の追加金融緩和 



11月1日付け各紙は「日銀の追加緩和 政権、新経済対策へ」として、日本銀行が昨年4月に過去最大規模の金融緩和を決めて以来だそうです。

詳細は引用した日本経済新聞の社説を参照ください。穿った見方をすれば「異次元の追加緩和」とは、要するに打つ手なしなのではないでしょうか。

筑摩書房のPR雑誌『ちくま』(2014年11月号)で、文芸評論家の齋藤美奈子さんが「世の中ラボ」という連載を持っておられます。今月号は安倍内閣のアベノミクスの見立て自体が間違っているという指摘です。

毎回世相を深読みするために入門書的な3冊を紹介して解説するという構成です。「資本主義に代わるシステムを展望する」として展開されています。日本銀行の景気対策が劇的に効かないのは、そもそも経済成長を期待しての景気刺激策自体が世界的に見て効力がなくなっているのではないか。そもそも経済に重きを置いたシステムそのものが日本の針路としては相応しくないのではないかという疑問です。

紹介されている本は3冊です。

・『資本主義の終焉と歴史の危機』
・『われわれはどこへ行くのか?』
・『人口減少社会という希望』

書籍の内容紹介は『ちくま』を参照ください。いずれも「経済成長」を目標とすることに無理があるという主張は同じです。

人口減少の低成長経済社会に突入した成熟国日本で、新たな目標設定は非常に難しいかも知れませんが、早めに舵を切らないと国民全員共倒れになりそうで不安ですね。

新たな目標設定が「2年程度を念頭にできるだけ早く2%という物価目標を達成する方針」ではないことだけは確かなようです。


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異次元の追加緩和に政府も応えよ (2014/11/1付 日本経済新聞社説)

 日銀が追加の金融緩和に踏み切った。年間で約60兆~70兆円増やすとしていた資金供給量を約80兆円まで拡大する。

 黒田東彦総裁は15年以上に及ぶデフレからの脱却にむけ、日本経済は「正念場にある」と強調した。まずはその判断を尊重したい。政府や企業も日銀に応え、日本経済の本格的な再生のための努力を倍加すべきだ。

日銀は副作用に留意を 追加緩和は、長期国債を買い入れるペースを年間で約80兆円と、いまの約50兆円から約30兆円増やすのが主な内容だ。満期までの残存期間が長い国債を買い増し、長期金利を含めて金利全体の低下をうながすねらいがある。

 リスクの高い上場投資信託(ETF)や不動産投資信託といった資産の年間購入額はそれぞれ約3倍に増やす。市場関係者の意表をついた追加緩和を受け、東京市場では株高と円安がすすんだ。

 日銀が追加緩和をするのは、黒田総裁就任直後の昨年4月以来だ。「量・質ともに次元の違う金融緩和」の拡大といえる。

 最近の消費者物価上昇率は鈍り始めていた。足元でエネルギー価格が下落し、9月の全国消費者物価上昇率は消費増税の影響を差し引くと1.0%にとどまる。

 いくら一時的とはいえ、消費者物価の下落圧力が残っていると、人々が予想する物価上昇率が低下してかえってデフレ脱却が遠のくリスクがある。日銀がこの時点で先手を打ち、デフレ脱却に万全を期そうとしたのは理解できる。

 4月の消費増税のあとの日本経済は回復がもたついている。7~9月期の実質経済成長率も高い伸びは期待しにくい。

 日銀が経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示した予測中央値は、2014年度の実質経済成長率を0.5%と7月時点から下方修正した。

 消費増税前の駆け込み需要の反動が長引いていることや、輸出が伸び悩んでいる点は日銀も認めている。追加緩和には景気を下支えしようという意図もあったとみられる。

 もちろん追加緩和にはマネー膨張という副作用がある。また、追加緩和を機に円安が急激に進めば、輸入物価の上昇を通じて消費者物価は上がりやすくなるが、賃金や雇用の拡大が伴わないと望ましいデフレ脱却とは到底いえないだろう。

 今回の追加緩和は、9人の政策委員のうち4人が反対した薄氷の決定だった。このことからも判断の難しさがうかがえる。

 黒田総裁は2年程度を念頭にできるだけ早く2%という物価目標を達成する方針に変わりはないと発言した。だが、2%に向かって機械的に緩和するのは困る。大事なのは、物価だけでなく経済全体や金融市場の動向にきめ細かく目配りし、柔軟な金融政策運営をすることだ。

 先進国で最悪の状態にある財政への配慮も欠かせない。金融緩和の主な手段は長期国債の購入だからだ。それが財政の尻ぬぐいだと受け止められれば日本国債への信認が低下し、長期金利が急上昇しかねない。

 心配なのは、政府・与党内から景気対策を盛り込んだ14年度補正予算案の編成を求める声が出ていることだ。

財政の信認も不可欠

 景気は今年1月を山として後退局面に入ったとの見方がエコノミストから出ているが、先行きを過度に悲観するのもどうか。企業の在庫調整はすすみ、生産は緩やかに回復する兆しが出ている。9月の雇用者数は過去最高だ。

 過去のさえない景気指標をみて景気対策をまとめる。景気対策をいざ実行するときには景気はすでに回復局面に転じ、結果的に必要以上に財政出動していた。政府はこんな失敗を繰り返してきた。

 仮に景気対策が必要になったとしても、低所得者対策に中身を絞り込むなどの工夫がいる。

 今回の追加緩和は、予定通り消費税率を来年10月に10%に上げるかどうかをめぐる安倍晋三首相の判断にも影響を与えるだろう。

 増税の是非とは別に、政府はデフレ脱却を日銀頼みにせず、成長戦略を着実に実行してほしい。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の妥結は遅れ、社会保障改革も不十分だ。こうした課題にこたえる責任が政府にはある。

 企業も手元資金や収益が増えている割には投資やM&A(合併・買収)などにお金を使うのに慎重なままだ。「次は政府と企業の番」。黒田総裁はそんなボールを投げたようにもみえる。