音楽評論系のYouTubeでよく観ている「みのミュージック」でロックのライブ・アルバム・ベスト5の発表があり、好きなバンドのリトルフィートのライブ・アルバムが取り上げられていたので取り寄せてみました。
スタジオ録音のアルバムは結構聞き込んできたのですが、このライブ・アルバムは初めて聴きました。辛口の「みのミュージック」が絶賛するだけあって演奏・ヴォーカルとも素晴らしい出来栄えです。
2015年3月29日日曜日
2020年5月10日日曜日
このライブ・アルバム発表の翌年、1979年6月29日にリーダーのローウェル・ジョージが薬物の過剰摂取(オーヴァードーズ、overdose)で34歳で亡くなってしまったのですが、死に至る白鳥の最後の歌のような作品になってしまいました。
識者による評論多数で、当方が付け加えることはありません。下記のサイトの評論が良くできてましたので引用させていただきます。
http://www009.upp.so-net.ne.jp/wcr/waiting_for_columbus.html
Waiting For Columbus
Little Feat
Released in 1978
Produced by Lowell George
Label: Warner Bros.
1975年頃から、ローウェル・ジョージはドラッグの影響によって、徐々に肉体的・精神的に衰えていきます。奇行が増え、リトル・フィートのリハーサルやレコーディングに現れないこともしばしばでした。他のメンバーたちはスタジオでローウェルを待つ間の暇潰しにジャム・セッションを行い、これが後期リトル・フィートのサウンドの特徴のひとつとなった、長いインスト・パートをもたらすことになります。
この新たなアプローチによって、殆どローウェル不在の状態で『Time Loves A Hero』を作り上げた彼らでしたが、バンドの状況は不安定のままで、メンバーたち自身も解散は時間の問題と思っていたようです。そんな時にローウェルが突然、「ライヴアルバムを作ろう」との提案を持ち出します。当時はバンドの運営に対する興味を全く失ってしまったかに見えたローウェルからの前向きな提案に、他のメンバーは驚きながらもそれを受け入れました。
そうして制作された『Waiting For Columbus』は2枚組の大作で、リトル・フィートのそれまでで最大のヒットになったばかりでなく、ロック史に残る名ライヴアルバムと呼ばれることになります。しかし、バンドは内部事情は好転せず、翌年にはローウェルが一方的に解散宣言を出し、ソロ活動に入ります。まもなくローウェルの気が変わったらしく再度バンド活動は始動したものの、間もなくローウェルの死によってリトル・フィートはその生命を終えることになります。結果的にこのアルバムはリトル・フィートの全ての足跡を集大成したと言っても過言でないものとなりました。
後になって思うと、ローウェルは自らの死期を悟り、リトル・フィートの総仕上げをしておきたかったのではないか。そんな神秘的なことすら考えてしまうような、運命的な必然性とでも言うべきものがこのアルバムが作られた背景、そしてそこに込められた音楽からは感じられるのです。
このライヴ・アルバムのレコーディングの為に、ロンドン、マンチェスター、ワシントンDCの3箇所で計8回のコンサートが行われました。その中から選び抜いたテイクからこの2枚組のアルバムは制作されています(マンチェスターの音源は結局使われなかった)。基本的にはコンサートの進行順の収録となり、A~C面がメインセット、D面がアンコールという構成になっていますが、メインセットで一部順番が差し替えられており、メインセットの最終曲である「Spanish Moon」が1枚目のラストに来るような構成となっています。
アルバム・タイトルの『Waiting For Columbus』は日本語訳すると、“コロンブスを待ちながら”ということになります。リトル・フィートを発見されるのを待っているアメリカ大陸にたとえているようです。これは逆に言えば、その時点でのリトル・フィートが発見されていない(=知名度が低い)ことになるので、かなり自虐的なタイトルと言えます。ところが今作が見事にヒットし、彼らは目出度く世間に“発見”されたのですから面白いものです。
私にとっても今作は初めて聴いたリトル・フィートの作品ということになるのですが、その後少しずつスタジオ盤を買い進めていくうちに、「え、この曲ってこんなにショボかったの?」という感想を何度か持つことになりました。そのくらいこのアルバムの演奏は充実しており、バンドの全霊をかけたような気合いがこもっています。
過去数作で一歩引いた存在となったローウェルが全面的に関わっているわけですが、その割には単純に昔のリトル・フィートに戻ったというイメージではなく、昔の彼らと最新の彼らの良いところをうまくブレンドしたような作品に仕上がっています。実際、『Time Loves A Hero』で大活躍したパワー・オブ・タワーのホーン・セクションが参加していますし、最終テイクではボツになったものの、ドゥービー・ブラザーズのパット・シモンズとマイケル・マクドナルドが参加している曲もあります。
冒頭の「Join The Band」はリトル・フィートがバックステージからステージを向かう際に気合いを入れる為に歌っていたトラディッショナル曲です。元々の録音予定にはありませんでしたが、ワシントン公演のエンジニアを勤めたウォーレン・デューイがコンサートの初日にも2日目にもバンドがそれを歌っていることに気づき、「これは面白い」と気を利かせて急遽3日目の公演でバックステージの通路にマイクを設置して収録に成功したそうです。
ウォーレン・デューイはリトル・フィートとの仕事はこれが初めてだったそうで、彼の新鮮な発想が今作にエネルギーを注ぎ込んでいる面が多分にあるようです。彼はそれまではアース・ウィンド・アンド・ファイアの仕事などをこなしており、ファンキーなノリをうまく音盤に刻み込むことが得意だったことも、このアルバムがリトル・フィートの魅力をもっともうまく捉えた作品になった所以でしょう。
「Fat Man In The Bathtub」はワクワクするような前奏がたまりません。この曲は『Dixie Chicken』ではさほど目立つ曲ではありませんでしたが、ここでの演奏によってリトル・フィートを代表する曲のひとつになったような気がします。間奏での、スタジオ盤にはなかったビル・ペインによるシンセサイザー・ソロも華やかさを沿えていますし、もちろんローウェルのスライド・ギターは絶好調です。
続く「All That You Dream」もいやが上にも気分が盛り上がるような演奏です。私が最初に気に入ったリトル・フィートの曲がこれでした。彼らのギタリストというとどうしてもローウェルの印象が強いのですが、この曲でのポール・バレールのリズム・ギターは聴き手をゾクゾクさせる魅力を持っています。
シンセ中心の「Fat Man In The Bathtub」と「All That You Drea」から、次の「Oh Atlanta」ではいきなりファンキーなピアノに導かれて始まるところも効果的です。この曲では間奏ではローウェルとバレールのギター・バトルを存分に堪能することもできます。
次の「Old Folks' Boogie」はバレール作のブルージーなナンバーで、それまでよりもややテンポを落としてコンサートの流れを変えています。ラストの部分でタワー・オブ・タワーのホーン・セクションが登場し、雰囲気をガラっと変えるところが印象的です。ここでA面が終わりですが、誰もが「もう終わりかよ」とブーイングをしたい気持になり、そそくさとB面へ進まざるを得ないのではないでしょうか。
B面は「Time Loves A Hero」で幕を開けます。様々な楽器が次々と登場するエンディングに幻惑されていると、いつの間にやら「Day Or Night」に入っています。この曲もフュージョンが強く、リトル・フィートの曲の中では無視されがちですが、ライヴにするとなかなか盛り上がります。この曲の後半のドラム・ソロはリッチー・ヘイワードのファンには聴き逃せないものです。
B面の後半は実際のコンサートではメインセットの終盤ですので、盛り上がりは最高潮に達します。特にタワー・オブ・タワーのホーン・セクションの魅力を大いに活かしているのが、この辺りです。「Mercenary Territory」ではホーン・セクション全体としての味付けの他にレニー・ピケットによるサックス・ソロもフィーチャーされており、まるでローウェルのギター奏法を意識したようなサックス・ブロウを聴かせてくれます。「Spanish Moon」はヴァン・ダイク・パークスがプロデュースしたスタジオ盤でもホーンがフィーチャーされていましたが、ここではそれが更にパワーアップし、非常に汗臭い演奏となっています。
C面の目玉は何と言っても「Dixie Chicken」の超ロング・ヴァージョンでしょう。一回目の間奏ではビル・ペインのジャズ超のピアノ・ソロという楽しいオマケを楽しむことができます。二回目の間奏では、ローウェルとバレールによる熱いギター合戦が繰り広げられます。エンディングに入ると突然スピードがアップし、そのまま「Tripe Face Boogie」に突入します。「Tripe Face Boogie」の途中でビルがピアノからシンセサイザーとエレクトリック・ピアノにスイッチし、演奏は再びフュージョン的な展開を見せます。
ホーン・セクションの参加によって「Rocket In My Pocket」もずいぶんと賑やかな曲になりました。ローウェルのアクの強さがよく出たこの曲は『Time Loves A Hero』の中ではちょっと浮いた存在でしたが、このライヴの流れで聴くとじつにしっくりと来ます。
D面に収録されたアンコールは、お馴染みの「Willin'」で幕を開けます。リトル・フィートのステージでおそらくはもっとも数多く演奏されてきたこの曲は、今回はデビュー盤に収録されたヴァージョンを意識したかのようなゆったりとしたスタイルで演奏されています。
オリジナル・アルバムには未収録の短いコーラス曲「Don't Bogart That Joint」を挟んで、大ブルース大会が始まります。その1曲目はミック・テイラーをゲストに迎えた「A Apolitical Blues」、2曲目は「Sailin' Shoes」の“酔っぱらいヴァージョン”とでも称したくなるような、最高にルーズでブルージーなヴァージョンです。
ラストを締めくくるのは「Feats Don't Fail Me Now」のかなりハイ・スピードなヴァージョンです。途中にはかなり長い観客との掛け合いが入ります。掛け合いの途中では、楽器がタンバリンらしきものを除いて全て休んでしまう箇所もあり、そこから楽器が徐々に復帰する部分はとてもスリリングです。
私がこのアルバムを初めて聴いた時、これが崩壊寸前のバンドによる演奏だなどとは全く知りませんでした。そして、そのことを知った今になっても、やはりこれが崩壊寸前のバンドによる演奏だなどとは全く信じられないのです。
(佐々木実)
[A]
"Join The Band" (Traditional) 1:50
"Fat Man in the Bathtub" (George) 4:50
"All That You Dream" (Barrere, Payne) 4:25
"Oh Atlanta" (Payne) 4:09
"Old Folks' Boogie" (Barrere, G. Barrere) 4:22
[B]
"Time Loves a Hero" (Barrere, Gradney, Payne) 4:20
"Day or Night" (Payne, F. Tate) 5:23
"Mercenary Territory" (George, E. George, Hayward) 4:27
"Spanish Moon" (George) 4:49
[C]
"Dixie Chicken" (George, Kibbee) 9:00
"Tripe Face Boogie" (Hayward, Payne) 7:02
"Rocket in My Pocket" (George) 3:42
[D]
"Willin'" (George) 4:42
"Don't Bogart That Joint" (E. Ingber, L. Wagner) 0:57
"A Apolitical Blues" (George) 3:41
"Sailin' Shoes" (George) 6:18
"Feats Don't Fail Me Now" (Barrere, George, Kibbee) 5:17
Paul Barrere - guitar, vocals
Sam Clayton - congas, vocals
Lowell George - lead vocals, guitar
Kenny Gradney - bass guitar
Richard Hayward - drums, vocals
Bill Payne - keyboards, synthesizer, vocals
Mick Taylor - slide guitar ("A Apolitical Blues")
Michael McDonald and Patrick Simmons - backing vocals ("Red Streamliner")
With the Tower of Power horn section:
Emilio Castillo - tenor saxophone
Greg Adams - trumpet
Lenny Pickett - alto saxophone and tenor saxophone
Stephen "Doc" Kupka - baritone saxophone
Mic Gillette - trombone, trumpet
<アルバム・ジャケットについて>
http://www.tapthepop.net/live/46656