[積読立読斜読] 『漱石俳句集』(坪内捻典編、岩波文庫)明治三十年 325—334
325 明月に今年も旅で逢ひ申す
326 明月や拙者も無事でこの通り
327 蛼よあきぢや鳴こうが鳴くまいが
328 月に行く漱石妻を忘れたり
329 某(それがし)は案山子にて候雀どの
330 野分して蟷螂を窓に吹き入るる
331 菊の頃なれば帰りの急がれて
332 一東の韻に時雨るる愚庵かな
333 水仙の花鼻かぜの枕元
334 楽に更けて短き夜也公使館
331~333 句稿(その二十七)にある句
蛼 (コオロギ)
一東の韻―上平声十五韻の第一番目の韻字。愚庵―万葉調歌人の禅僧、天田愚庵。この句は愚庵が漢詩を作っている様子。
