2024年7月13日土曜日

[積読立読斜読] 『妻に稼がれる夫のジレンマ ─共働き夫婦の性別役割意識をめぐって』(小西一禎 著、ちくま新書、2024年)


本書は女性の駐在員の夫が「駐夫(ちゅうおっと)」となった著者自身の経験をもとに、同じ境遇にあった12人にインタビューし学術論文としてまとめたものを新書化したもの。「駐夫(ちゅうおっと)」は著者の造語(「ちゅうふ」と読ませたほうが語感が落ち着くが?)。

当方は駐在員の経験があり興味深かったので読んでみました。「駐夫(ちゅうおっと)」としての悩みや不安が、はからずも日本の労働環境やジェンダー意識を鮮明にあぶりだす試金石となり、当人は大変だったでしょうが、おそらく初めての視点からの社会学の一例となりました。

駐在員となる女性ですので、大変優秀な方で、ほとんどが夫よりも収入がよく、キャリアも開けています。「駐夫(ちゅうおっと)」は男の「沽券」であるとか「甲斐性」であるとか、日本の宿痾である家父長制をひきずった精神と、いまだに年功序列・修身雇用を残す日本の古い労働慣習(転職が容易でない)の因循さに直面します。

オピニオンとしては非常に数が少ないので、停滞する日本経済の起爆剤となならないでしょうが、視点が新鮮でした。


著者の提案のまとめ。

(1)配偶者同行休業制度(現在は公務員・大企業のみ)の必須化。

(2)日本の男性の柔軟なキャリアの容認。

(3)キャリアリカバー制度の充実。

(4)駐在員配偶者の現地就労規制の緩和。

(5)リモートワークによるキャリアの継続。

(6)駐在員を出した組織が配偶者を支援する仕組みの充実化。


朝日新聞の記事がよくまとまっていたので引用します。


<この本の内容>

共働きが一般化し、女性の社会進出が進んだ現在、妻のキャリアを優先する家族が現れ始めた。バリバリ稼ぐ妻を支えるため、仕事を離れて主夫となり、子育てをメインで担う夫たち。収入が下がり、社会的な立場が不安定になったとき、彼らの胸の内に去来するものとは―。駐在員の夫として海外で暮らす「駐夫(ちゅうおっと)」と、キャリアを重ねる妻を持つ夫たち一二人にインタビュー。稼ぐ力と男らしさを巡る葛藤と、自らの決断を活かして新たなキャリアを切り開く新時代の夫の姿が見えてくる。


<この本の目次>

第1章 令和の潮流、海外で妻を支える駐夫

第2章 キャリア中断の実態

第3章 葛藤の末、駐夫に転じる

第4章 帰国を見据え、新たなキャリアへ

第5章 妻に収入で負けたとき

第6章 男性は何と戦うべきか

第7章 夫も妻も活躍する社会をつくるには


<著者について>

小西 一禎(コニシ カズヨシ)

小西 一禎(こにし・かずよし):1972年生まれ、埼玉県行田市出身。ジャーナリスト・作家。慶應義塾大学卒業後、共同通信社に入社。政治部で首相官邸や外務省などを担当し、2017年に妻のアメリカ赴任に伴い会社の休職制度を男性で初めて取得、妻・二児と渡米した。在米中に退社。元コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。在米時から、駐在員の夫「駐夫」として各メディアに寄稿する他、「世界に広がる駐夫・主夫友の会」代表を務める。専門はキャリア形成やジェンダー、団塊ジュニアなど。著書に『猪木道』(河出書房新社)がある。

https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480076052/