2018年7月28日土曜日

[惹句どんどん] 加藤陽子(東京大学大学院教授、日本近代史)


 (近代史を)あえて現在の自分とは遠い時代のような関係としてみる感性、
これは、未来に生きるための指針を歴史から得ようと考える際には
必須の知性であると考えています。



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帰国まで、気の遠くなるような時間のかかった残留婦人、残留孤児などの問題を考えれば、国家の責任を強く追及する思いで歴史を振り返りたくなる気持ちもわかります。しかし、たとえば、自らが分村移民を送り出す村の村長であったらどう行動したか、あるいは、県の開拓主事であったらどう行動したか、移民しようとしている家の妻であったらどう行動したか、関東軍の若い将校であったとしたらどう行動したか、そのような目で歴史を振り返って見ると、また別の歴史の姿が見えてくると思います。

近代史をはるか昔に起きた古代のことのように見る感性、すなわち、自国と外国、味方と敵といった、切れば血の出る関係としてではなく、あえて現在の自分とは遠い時代のような関係としてみる感性、これは、未来に生きるための指針を歴史から得ようと考える際には必須の知性であると考えています。

『とめられなかった戦争』(加藤陽子著、文春文庫、2017年)