704 生残るわれ恥かしや鬢の霜
[積読立読斜読] 『漱石俳句集』(坪内捻典編、岩波文庫)明治四十三年 695—704
695 秋の江に打ち込む杭の響かな
696 秋風や唐紅の咽喉仏
697 秋晴に病間あるや髯を剃る
698 秋の空浅黄に澄めり杉に斧
699 衰に夜寒逼るや雨の音
700 旅にやむ夜寒心や世は情け
701 蕭々と雨の聞くらん宵の伽
702 秋風やひびの入りたる胃の袋
703 風流の昔恋しき紙衣(かみこ)かな
704 生残るわれ恥かしや鬢の霜
692から766までは修善寺温泉での作。
9月8日の日記に694から696の句が記された
697 病間―病気がすこしよくなっている時。