2021年5月24日月曜日

[積読立読斜読] 『決定版 日本の喜劇人』(小林信彦著、新潮社、2021年)



小林信彦さんが新潮社のPR雑誌『波』に最終章を書かれていた『日本の喜劇人』が完結して、『決定版 日本の喜劇人』として刊行されました。小林信彦さんは1932年生まれ。日本橋の老舗の和菓子屋に生まれ、幼少期より演芸・映画に親しみ、雑誌編集者や、TVの放送作家としても活躍された、まさに日本の芸能史の生きる百科事典のような方です。

思想家の内田樹さんのサイトからの孫引きですが、いくらYuoTube等で昔の映像を見ることができるとはいえ、生の舞台を再現するのは不可能なので「小学生で古川ロッパ」を観て感動した、という唯一無二の存在です。



  ピエール・ブルデューは『ディスタンクシオン』で、「後天的に努力して文化資本を学習しなければならない階層」と「生まれつき文化資本を身につけた階層」の乗り越えがたい差異のうちに階層再生産の力学が働いていることを明らかにしました。

「飲んだことのないワイン」について、セパージュがどうたら、テロワールがどうたら、マリアージュがどうたらとあれこれ蘊蓄を傾けられるのが「後天的文化貴族」。一方で、ワインの銘柄も産地も価格も知らないけれど、それを口にしたとき鼻腔に広がった香りや、グラスの舌触りや、かかっていた音楽や、窓から見えた風景をありありと思い出して、その愉悦について語ることができるのが「先天的文化貴族」です。文化資本をどこかから集めて来た「情報」として所有しているのか、固有名での「経験」として所有しているのか、その違いと言ってもいい。

「内田樹の研究室」より 

http://blog.tatsuru.com/2019/12/01_0927.html

 


日本経済新聞WEB

2021/05/21



<内容紹介>

エノケンから志村けんまで――。圧倒的影響力を持つ伝説の名著、愈々完結!

芸のみならず、喜劇人の人間性にまで肉薄し、〈笑い〉を批評の対象に高めた初版刊行から半世紀。加筆・改稿の上、BIG3・志村けん・大泉洋までに言及した新稿と著者インタビューを収録。戦前のロッパ、エノケンから森繁、渥美、植木、伊東四朗らを経て現在に至る系譜を明らかにする。喜劇を見続けて80余年、国宝級集大成がここに!


<目次>

◆日本の喜劇人

はじめに

第一章 古川緑波ロッパ 丸の内喜劇の黄金時代

第二章 榎本健一 THE ONE AND ONLY

第三章 森繁久彌の影 伴淳三郎 三木のり平 山茶花究 有島一郎 堺駿二 益田喜頓

第四章 占領軍の影 トニー谷 フランキー堺

第五章 道化の原点 脱線トリオ クレイジー・キャッツ

第六章 醒めた道化師の世界 日活活劇の周辺

第七章 クレイジー王朝の治世

第八章 上昇志向と下降志向

渥美清 小沢昭一

第九章 大阪の影 『てなもんや三度笠』を中心に

第十章 ふたたび道化の原点へ てんぷくトリオ コント55号 由利徹

第十一章 藤山寛美 伝統の継承と開拓と

第十二章 日本の喜劇人・再説

最終章 高度成長のあと


◆日本の喜劇人2

はじめに

第一部 植木等

1 ジャズ喫茶(1958?60)

2 歌で始まる(1961)

3 映画への進出(1962?63)

4 スーパーマンの憂鬱(1964?65)

5 頂点(1965?67)

6 王朝の崩壊(1968?72)

7 サウンドの評価と復活(1973?91)

第二部 藤山寛美

1 東京オリンピックの年(1964)

2 成功への綱渡り(1965?71)

3 「阿呆まつり」のころ(1971?72)

4 成功と疎外感(1972)

5 黄金時代(1973?74)

6 花のマクベス(1975)

7 終幕(1989?90)

第三部 伊東四朗

1 〈トリオ〉からの出発(1962?66)

2 自立と遅咲き(1967?73)

3 最後の喜劇人(1974?)

『決定版 日本の喜劇人』あとがき

附・小林信彦インタビュー ぼくは幸運だった

主要人名・グループ名索引


<著者プロフィール>

小林信彦(コバヤシ・ノブヒコ)

1932(昭和7)年、東京・旧日本橋区米沢町(現・中央区東日本橋2丁目)に和菓子屋の長男として生れる。幼少期より、多くの舞台や映画に触れて育った。早稲田大学文学部英文科卒業後、江戸川乱歩の勧めで「宝石」に短篇小説や翻訳小説の批評を寄稿(中原弓彦名義)、「ヒッチコックマガジン」創刊編集長を務めたのち、長篇小説『虚栄の市』で作家デビュー。創作のかたわら、日本テレビ・井原高忠プロデューサーに誘われたことがきっかけで、坂本九や植木等などのバラエティ番組、映画の製作に携わる。その経験はのちに『日本の喜劇人』執筆に生かされ、同書で1973(昭和48)年、芸術選奨新人賞を受賞。以来、ポップ・カルチャーをめぐる博識と確かな鑑賞眼に裏打ちされた批評は読者の絶大な信頼を集めている。主な小説作品に『大統領の密使』『唐獅子株式会社』『ドジリーヌ姫の優雅な冒険』『紳士同盟』『ちはやふる奥の細道』『夢の砦』『ぼくたちの好きな戦争』『極東セレナーデ』『怪物がめざめる夜』『うらなり』(菊池寛賞受賞)などがある。また映画や喜劇人についての著作も『世界の喜劇人』『われわれはなぜ映画館にいるのか』『笑学百科』『おかしな男 渥美清』『テレビの黄金時代』『黒澤明という時代』など多数。