2021年7月20日火曜日

[積読立読斜読] 『短編回廊』より「ビッグタウン」


 あまり美術作品には詳しくないので、このカナダの女流画家、Lilias Torrance Newtonさんの画壇の位置は不明で、また作品の"Nude in the studio"(1933)の美術史的な価値もわかりません。




Lilias Torrance Newton RCA (November 3, 1896 ? January 10, 1980) was a Canadian painter and a member of the Beaver Hall Group.

wikipediaより


自分の肖像画


著者のサラ・ワインマンさんはNY在住。カナダ出身のジャーナリスト。女性が関係する犯罪のノンフィクションの選者であり、本作品が若干クライム・ノベル風なのはその背景が関係していると思います。


作品のもとになった絵画は一見して妖しい雰囲気です。画家が女性という理由なのか、一般的なヌード・モデルに比べて腰の張がまったくなく、素人のモデルというのが分かります。表情も豊かではなく、あまり気乗りのしないモデル家業だったのでしょうか。


サラ・ワインマンが用意した作品の出だしです。


P511

大物ギャングの愛人になって、そいつの家に呼ばれていったら、居間の壁に自分の母親の肖像画がかかっているのを見ることになるなんて、誰に予測できただろう。しかも、その肖像画の母親が緑のヒール・サンダルを履いているのを除けば、文字通り一糸まとわぬ姿でかかれていたのだから。


作品の途中から女流画家の作品と判明するのですが、題材と作者の経歴を知っている人にはネタバレだったかも。


母親の裸の肖像画を見つけた「娘」の人物設計が浅く、結末ももう一ひねり欲しいところですが、"Nude in the studio"の不思議な雰囲気に免じます。