2021年7月16日金曜日

[積読立読斜読] 『短編回廊』より「ピエール、ルシアン、そして私」

 




スローリーディング中のアンソロジー集『短編回廊』。本日はルノアールの小品に着想を得た洒脱なミステリーです。


作者は1954年生まれ、イングランド出身のミステリー作家、代表作はジャック・リーチャー・シリーズ。

創作元になったのはルノアールの"Bouquet of Chrysanthemums"(1881)です。


ルノワールの贋作を巡るミステリーで、大富豪の若い男と、美術館勤務の詐欺師の話。
偶然にもルノワールの贋作(と同時に作成中の本物1点)を大量に手に入れた詐欺師は、依頼人の大富豪には贋作3作品を渡し、自分は本物1点は自分の居間に飾り、残りの贋作をルノワール作と偽って富を築いた。人生の最後に男がとった行動は?

ルノアールの実人生のちょっとしたヒントから紡ぎ出された良質のミステリー。作品にあわせて非常に小ぶりな短編になっています。



ルノアール  1841‐1919
 Pierre‐Auguste Renoir

フランス印象派の画家。リモージュに仕立屋の息子として生まれる。一家はまもなくパリに出,13歳のときから陶器の絵付師としての修業をし,のちに家具や扇子にロココ風の装飾をして生計を立てる。21歳のとき,エコール・デ・ボザール(国立美術学校)の生徒となり,グレール M. G. C. Gleyre のアトリエに入り,バジール,モネ,シスレーらと親交を結ぶ。1863年ころフォンテンブローの森で戸外制作を試み,そこで会ったディアズ N. Diaz dela Pe4a の影響もあって,色彩は明るさを増す。友人たち,とくによくいっしょに制作したモネが風景画に強い関心を示したのに対し,ルノアールは戸外人物にひかれる。64年のサロン(官展)初入選作《踊るエスメラルダと山羊》(自身の手で破棄),《狩猟のディアナ》(1867)は物語性が強く,人工的な不自然さを残すが,68年にサロンに出品した《日傘の女》では,戸外に立つ白い服の女性に当たる光と影の効果を,きわめて自然なままに追求して新しい一歩を開いた。このようにして74年の第1回印象派展を迎えたルノアールは,光あふれる戸外での幸福そうな人々の集いを描きつづけ,ドガと並んで印象派における人物画家として,1,2,3,7回目の印象派展に出品した(《船遊びの人々の昼食》1880‐81など)。81年のアルジェリア旅行のあと,イタリアに旅立ち,ラファエロの作品に強い感銘を受ける。それはちょうど彼が,感覚を通して移ろいやすい視覚的効果を描き留めようとする印象派のやり方に疑問を持ちはじめ,より堅固で永続的なものを表そうとしていた時期であった。彼の様式は,輪郭線と冷たい色調で特徴づけられる〈酸っぱい様式 Mani≡re aigre〉に変わっていく。しかし88年,この様式に行き詰りを感じたルノアールは,再び輪郭線のない,あふれるような豊かさを示す色彩の開花へ,すなわち〈真珠色の時代Pレriode nacrレe〉へと移行していく。1903年,地中海岸のイタリアとの国境に近いカーニュ・シュル・メール Cagnes‐sur‐Mer にコレット荘を買い取り,持病のリウマチに苦しめられながらも,裸婦や肖像画の制作を続け,意欲は衰えることを知らなかった。親しみやすい小作品がほとんどであったが,《水浴の女たち》(1918ころ)のような大画面に,晩年の裸婦研究の成果を結実させた。
                        馬渕 明子

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