2021年7月9日金曜日

[積読立読斜読] 『パンドラの匣』(太宰治、1946(昭和21)年)

 


2021年後半の読書テーマ、太宰治の主要作品を読む。

本日は『パンドラの匣』を読みました。

オリジナルは終戦直後の昭和21年10月から翌年1月まで『河北新報』に連載された新聞小説。

新潮文庫に併録されている『正義と微笑』と対をなす少年向けの小説で、いわゆる「サナトリウム文学」です。

『正義と微笑』が日記体、『パンドラの匣』が書簡体、という違いがあります。

『パンドラの匣』のモデルとなったのは、太宰の未見の弟子で、肺結核で亡くなった無名の木村庄助さんの日記。遺言によって送られてきた日記を読み、小説化したそうです。

「健康道場」という一風変わった結核療養所が舞台で、そのポリシーは「病気を忘れる」というもの。いずれも閉塞的な療養所で病身ではあるものの若さを持て余した若者の生きる希望を描いて、太宰治にしてはシニカルな所がなく、極めてまっとうです。


P402

この道は、どこへつづいているのか。それは、伸びて行く植物の蔓に聞いたほうがよい。蔓は答えるだろう。「私はなんにも知りません。しかし、伸びて行く方向に陽が当たるようです。」さようなら。