2021年4月25日日曜日

[積読立読斜読] 『夢の浮橋』(谷崎潤一郎著、1959年)

 



年間テーマとして、阿刀田高さんの『谷崎潤一郎を知っていますか 愛と美の巨人を読む』を参考書にして、スローリーディング中の谷崎潤一郎主要作品。本日は中編の『夢の浮橋』を読みました。


『夢の浮橋』は1959(昭和34)年発表。谷崎潤一郎晩年の72歳の作品。『鍵』『瘋癲老人日記』とともに「晩年三部作」と称されます。高血圧症のため右手が不自由となり、口述筆記で書いた初めての作品。舞台は下賀茂神社糺の森の東に接した、下鴨泉川町の谷崎の京都最後の住居が舞台。「植惣」という庭師が丹精込めた庭は幽邃であったそうです。口述筆記の方も京都出身で、会話文の京都言葉も自然なものなのでしょう。


32歳で美貌の母を亡くした谷崎潤一郎は生涯に渡って「母性への憧れ」を作品で追求しています。阿刀田さんのガイドでは初期・中期・終期として『母を恋うる記』、『少将滋幹の母』、『夢の浮橋』を取り上げています。


『夢の浮橋』は題材とは直接関係ありませんが、源氏物語の光源氏が亡き母の面影を慕って、藤壺の女御と交わす不倫の恋が、底流にあるそうです。


小説としては題材はスキャンダラスなものの、筋は破綻しており、テーマがよく分かりません。語り手の私の手記という体裁。父と生母、継母との不倫疑惑、妻となる身分違いの澤子(後に離縁)、里子に出された父と継母との間の年の離れた弟を引き取り、老年の乳母と3人で生活を立て直すという、実生活とはかけ離れた美談で終わっていて、罪滅ぼしの懺悔文ともとれます。


乳離れして少年になっても実母の乳房を吸っていた語り手は、成人してからも、継母からの誘いで同じ行為を行います。棟方志功の装幀はこのふくよかな乳房を想像させるものとなってます。

今回は手持ちの棟方志功の装幀本で読みました。







<内容紹介>

若くして死んだ母そっくりの継母。主人公は継母へのあこがれと生母への思慕から、二人の存在を意識のなかでしだいに混乱させてゆく。谷崎文学における母恋物語の白眉。


中公文庫のサイトより