2021年3月13日土曜日

[積読立読斜読] 『蓼食う虫』(谷崎潤一郎)

 



阿刀田高さんの谷崎潤一郎入門書『谷崎潤一郎を知っていますか 愛と美の巨人を読む』(2020年、新潮社)をガイドブックに年間で主要作品をスローリーディング中。


本日は『蓼喰う虫』を読みました。ガイドブックでは『卍』と合わせて第4章「モチーフはなんだろう」に取り上げられています。


『蓼喰う虫』は1928年から翌年にかけて『大坂毎日新聞』に連載された新聞小説で、挿絵が小出楢重。単行本は1929年(昭和4年)に刊行。






夫婦仲の冷え切った斯波要と美佐子、美佐子の父親で50歳代半ばに隠居し、若い愛人お久と京都鹿ケ谷に済む風流人を巡り取り立てて山場のない淡々とした筆致で、大坂の伝統文藝である文楽人形を通奏に置き、夫婦の愛とは何か、日本の女性観とななにか、について読者に考えを委託した小説と読みました。


関西に移住して日本の伝統美に目覚めた谷崎の中期・成熟期を代表する作品と言われていますが、理想の女性を自らの手で作り上げる倒錯した愛を描いた『痴人の愛』に比べて、物語の奥行きの深遠さが、戦災前の京都・大坂の風景、人形浄瑠璃、を加えてことで極まり、作家としての成熟を感じます。


主人公らしき斯波要は、性欲は西洋娼館の中国人・ロシア人ハーフ、ルイズ(20歳ぐらい)で満たすのですが、理想の女性像はむしろ義父の若い妾、お久であり、それも生身のお久ではなく象徴としての日本女性のようです。




岩波文庫版では新聞連載時の小出楢重の飄々とした挿絵が楽しめますが、老眼の当方にはいささか文庫本の文字がきつく、キンドル版で読了しました。



<参考資料>

新聞連載時の小出楢重の挿絵







文楽  (ぶんらく )

大坂の人形浄瑠璃芝居の呼称。義太夫節を地とし3人遣いの人形で演じる。大坂において義太夫節を地とする人形芝居は,貞享年間(1684‐88)竹本義太夫によって創立された竹本座に始まるが,その後いくたびかの盛衰をへて幕末には植村文楽軒による興行が代表的な存在となった。1872年,新開地の松島に移ると同時に文楽座を名のり,これに対抗して旗揚げした彦六座の芸系が大正期に滅び去ったあとは文楽座がただ一つの存在となり,〈文楽〉はこの芸能自体を意味するようになった。現在では正式の呼称として使用されている。文楽は日本の人形劇の代表的存在として能,歌舞伎と並んで三大国劇の一つに数えられ,1955年には国の重要無形文化財の指定(団体)を受け,さらに63年に国と大阪府・市などにより財団法人文楽協会が設立されて,補助金によって運営されるようになった。84年に大阪に専用の国立文楽劇場が開設された。⇒人形浄瑠璃 山田 庄一

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文楽への補助金カット問題

財団法人が役人の天下り先となっているとして、2015年当時の大阪市長・橋本徹さんが見直しされたという現実的な話がありました。