2020年10月19日月曜日

[惹句どんどん] 太宰治『津軽』より

 凡人として長く生きてます。


太宰の文章は朗読すると一層魅力が増しますね。




本編

一 巡礼

「ね、なぜ旅に出るの?」

「苦しいからさ。」

「あなたの(苦しい)は、おきまりで、ちつとも信用できません。」

「正岡子規三十六、尾崎紅葉三十七、斎藤緑雨三十八、国木田独歩三十八、長塚節三十七、芥川龍之介三十六、嘉村礒多三十七。」

「それは、何の事なの?」

「あいつらの死んだとしさ。ばたばた死んでゐる。おれもそろそろ、そのとしだ。作家にとつて、これくらゐの年齢の時が、一ばん大事で、」

「さうして、苦しい時なの?」