2020年8月28日金曜日

[積読立読斜読]『原民喜 死と愛と孤独の肖像』(梯久美子著、岩波新書、2018年) Ⅱ 愛の章



スローリーディング中の岩波新書『原民喜 死と愛と孤独の肖像』(梯久美子著、岩波新書、2018年)。

本日は第2章の「Ⅱ 愛の章」を読みました。

この新書はほぼ編年体で原民喜の生涯とその作品を丁寧になぞった労作です。

第2章は、1924(大正13)年、18歳で慶應大学文学部予科に入学してから、結婚し、病気で妻を失うまで、が描かれています。

原民喜はほぼ定職につかず、裕福な軍御用達商店だった実家からの仕送りで、小説の執筆をつづけていました。

あまり知られていませんが左翼運動を20歳から21歳にかけて活動し、拘留の経験があるそうです(ただし作品には一切現れていません)。

内向的な原民喜に代わって社交的な妻が対外的な用事を片付け、原民喜は執筆に専念できる幸福な時代だったそうです。すべてを許せる妻によって封印していた父の記憶も蘇り、作品にすることができました。

一読者の興味は、この最愛の妻を失った後、一体原民喜がどう生き、どう書いたのか、という点です。

次の章で作者が明らかにしてくれると思います。

章の扉に引用されていた原民喜の作品「一つの星に」です。

わたしが望みを失って、
暗がりの部屋によこたはつてゐるとき、
どうしてお前はそれを感じとつたのか。
この窓のすき間に、さながら霊魂のやうに滑り落ちて来て
憩(やす)らつてゐた稀れなる星よ。